名作「風の谷のナウシカ」に登場する乗り物メーヴェ。風に乗って空を飛ぶ姿に憧れた人も多いのではないでしょうか。そんな夢のような飛行機メーヴェを開発した人物が八谷和彦氏です。風の谷のナウシカでのメーヴェの設定や、八谷和彦氏の手掛けたプロジェクトについて紹介します。, 宮崎駿監督の名作「風の谷のナウシカ」は皆さんご存じだと思います。劇場版アニメ「風の谷のナウシカ」は1984年3月11日に公開されました。戦争によって人類社会が滅びてから1000年後の荒廃した地球で生きる主人公ナウシカの物語が描かれていますが、その中でナウシカが操縦する飛行機がメーヴェです。他にも飛行機としては砲撃ができる「ガンシップ」もありますね。メーヴェとはドイツ語で「カモメ」を意味しているように、機体の形状は白い鳥のようで、1人から2人乗ることができます。, 映画のシーンを観ると鳥のように風に乗って飛んだり、エンジンの動力によって高速移動することもできることが分かります。またナウシカのセリフでは「ガンシップは風を斬り裂くけど、メーヴェは風にのるのだもの」と述べていて、主に風を利用した乗り物ということもうかがえます。垂直に離着陸したり自由に飛ぶ姿を見て憧れたのは、筆者だけではないと思います。このメーヴェに本気で乗りたいと決意し、乗り物として実際に開発した人物がいます。その人が八谷和彦(はちやかずひこ)氏です。, まずは八谷和彦氏が開発した、「M-02J」と名付けられたメーヴェ型の飛行機の実物が飛ぶ様子を見てみましょう。この動画は2013年に開かれた八谷和彦氏のメーヴェの実機を作るプロジェクト「OpenSky3.0」で披露されたテスト飛行の様子です。地上から数mを飛行することができましたが、大空を飛ぶメーヴェのイメージからは少し物足りなさを感じてしまいます。, もう一つご覧いただきたい映像がこちらです。こちらは2017年9月のテスト飛行の様子です。開発は着実に進められ、M-02Jが上空高くを優雅に飛行するところまで進歩しているのがわかります。映画のメーヴェのように鳥のように自由に飛ぶ様子は、とても気持ちよさそうですね。, 個人で空を飛べるという夢のようなメーヴェですが、メーヴェ型の飛行機を作った八谷和彦とはどのような人物なのでしょうか。八谷和彦氏は1966年4月18日生まれで、東京芸術大学の准教授でありメディアアーティストとしても活躍されています。代表的な開発製品は1997年のメールソフト「PostPet(ポストペット)」です。「ピンクのクマがメールを運ぶ」というコンセプトで、本来味気のないメールの送受信に、かわいい動物たちの気持ちも乗せてメールを送ってくれるということで爆発的な人気となりました。, 目に見えない他人の生活も実在していることを感じるコンセプトの「見ることは信じること」, 八谷和彦氏の過去の作品の一部をご紹介します。・1993年「視聴覚交換マシン」…お互いの見ているものを交換して相手の立場に立ち、アイデンティティを揺らがせることをコンセプトにしている。・1996年「見ることは信じること」…普通に見ると光の点滅にしか見えないが、専用のビューワーで見るととめどなく流れる他人の日記を読むことができる展示物。・2003年「オープンスカイプロジェクト」…体重50kg程度の人が一人乗ることができる「パーソナルジェットグライダー」を作るというプロジェクト。本記事で紹介しているメーヴェ開発の初期のプロジェクトにあたります。, 八谷和彦氏によると、1998年10月、埼玉県秩父市の「龍勢」という祭の帰りに、高速道路のサービスエリアでモスバーガーのレシートの裏にメーヴェの計算式を書いてみたといいます。計算したところ、パイロットは50kg、機体重量30kg、全長8mであれば作れるという結論に至ったそうです。それから年月が経ち、2003年にイラク戦争が勃発した際、日本政府が簡単に戦争に自衛隊を送ったことに対し「僕はナウシカにはなれないけど、戦争を止めようとするナウシカが乗るメーヴェを今のうち作ろう」と考えオープンスカイプロジェクトがスタートしました。, ただ八谷和彦氏は、メーヴェに感銘を受けたとはいえ、万一事故を起こすなどして宮崎駿監督やスタジオジブリに迷惑をかけるわけにはいかないとして、プロジェクトの途中から「メーヴェ」という名称を使わないことにしたそうです。さらに機体のテストパイロットはご自身が務め、全て自身の責任にあるとさえ語っています。メーヴェ型飛行機の開発にかける真摯な想いが伝わってきますね。, 八谷和彦氏の手掛けているメーヴェことM-02Jは、実はいきなり動画のような形状や八谷和彦氏本人が搭乗していたわけではありません。以下にOpenSkyプロジェクトの経緯を簡単に説明します。・2003年「メーヴェ1/2」…メーヴェが実際に作れるかどうか検証のため、1/2サイズのメーヴェに動力として小型ジェットエンジンを搭載し、ラジコンで飛行実験を行いました。形状はM-02Jとは多少異なっています。・2004年「M-01」…現在のM-02Jの形状で1/5スケールの模型を作成し、飛行機として機能するか実験を行いました。・2006年「M-02」…M-01の改良型として作成され、人が搭乗し乗り物として使用できる機体ですが、ジェットエンジン発進ではなくゴム索発航(ゴムで引っ張ってフライトする方法)でした。・2006年「M-02J」…動画でご紹介した飛行機です。ジェットエンジンを搭載し、一人で滑走から飛翔することができます。, アニメ「風の谷のナウシカ」ではメーヴェはどのような形状をしていて動力は何か気になりますよね。作品中の推計ではメーヴェは全幅5m、全長1m、全高1mほどの形状をしていて、重さは12kgという設定になっており非常に軽量な飛行機です。また、両翼は折り畳み式で収納しやすい設計になっているようです。機首の下には垂直離陸用の2つの排気口や、機体後方には高速移動用の排気口が備えられています。, メーヴェの動力となるエンジンですが、胴体の人が乗る足元に収納ペダルがあり、踏むことで点火するようです。動力エンジンの点火時には青白い炎が確認できますが、1000年前の失われた技術のためどのような原理かは設定では明らかにされていませんでした。なお、原作者の宮崎駿氏は「メーヴェは飛ばない」と断言されていたそうです。原作者でさえ無理だと言った乗り物を開発してしまうとは本当に驚きですね。, それでは八谷和彦氏が手掛けたM-02Jは、どのような設計になっているか見ていきましょう。概要をまとめると以下のようになります。■定員 :1名■サイズ:全幅9.63m、全長2.67m、全高1.36m■重量 :88kg■最大水平速度:111 km/h■材質 :木材、強化プラスチック、アルミ合金■動力 :ジェットエンジン(AMT Nike ターボジェット(推力:80kg))実物は原作の設定よりも大きく、重量もかなり重いようです。, 八谷和彦氏のメーヴェは操縦方法は特殊で、機体の旋回や上昇・下降は体重移動によって行っています。実機を使った操縦方法の説明の映像があるので以下をご覧ください。, 動画の八谷氏の説明を文字に起こしたものが以下になります。「体をこのようにしてひねると、機体がこのように(ひねった方に)、こっちに(反対に)するとこう(逆に)なります。機首を上げたり下げたりするには、前に出ると全体の重心が前に行って機首が下がります。逆に後ろに下がると重心が後ろに下がって機首が上がる。だから乗っているのを見るとこんな感じ(前後左右)の動きを細かくしています。(機体の)後ろにあるのは足を引っかけるやつで、腕の力だけでなくて足も使って体を前に出したり後ろにしたりするために付けたということです。」, つまり身体全体を使って重心を移動させた方向に、機体が旋回したり機首を傾けるということです。八谷氏の飛行中の映像をよく見るとわかりますが、体を細かく動かしているのが分かります。また、動力であるジェットエンジンは手元のボリュームで調整します。なぜこのような操縦システムにしたかというと、機体製造を依頼した有限会社オリンポス代表の四戸哲氏が提案した3つの案の中から、最もシンプルなものだったからだそうです。また、機体重量が88kgと人間の体重とあまり変わらないため、ハンググライダーと同じように重心移動による制御でも対応できるとも語っています。, メーヴェの実機はどのような材質でできているのでしょうか。八谷氏の説明によると大部分は木材で構造が組まれ、外翼や胴体の一部には強化繊維プラスチックも使われているそうです。木材は薄いながら何層にも重ねられ強度を強めているとのこと。また、外側の表面は熱で収縮するフィルムで覆われてもいます。そして驚くべきことに、翼と胴体の接合部分の隙間は市販の普通の養生テープで塞がれているだけです。なぜそうしているかというと、飛行場でフライトの度に組み立てと分解を行うため、ただ隙間を塞ぐだけなら使い捨てだから養生テープで十分なんだとか。さらに飛行機の生命線である燃料は、ガソリンスタンドでも売られている灯油が使われています。実際、ガソリンスタンドに燃料を買いに行くそうです。なんだか急にメーヴェが身近に思えてしまいます。, メーヴェの実機開発には、2003年のプロジェクト始動から数えて2017年までに実に14年かかっていることになります。上記でもご紹介してきましたが、初めは1/2スケールの模型作りから始まり、ゴムで引っ張って飛ばしたりジェットエンジンに切り替えるなど様々な実験を積み重ねてこられました。開発途中には悪天候でテスト飛行が中止になったり、エンジンの故障や推力強化のため新たなエンジンを試すなど試行錯誤があって現在に至るそうです。そして開発費用は2013年までの10年間で、なんと9500万円ぐらい投資したといいます。2017年現在ではさらに4年も経っているので1億円以上は費やしていることでしょう。単純な金額としては、メーヴェはとても高額な乗り物と言えますね。, メーヴェに乗るためには特別な許可が必要なのでしょうか。八谷氏はもちろんご自身の責任で乗っているとはいえ、日本では航空局の許可が必要となる場合があります。ジェットエンジンを搭載していないM-02の場合は日本ではグライダーと同じ「初級滑空機」として特に免許や資格は必要ありません。けれどもM-02J、つまり現在のメーヴェはジェットエンジンを搭載しているため何枚も書類を提出する必要があります。しかも毎月申請し、更新する必要があるというのです。飛行機を飛ばすのも仕事のうちなのですね。, 将来誰もがメーヴェに乗って自由に空を飛べたら素敵だと思いますが、メーヴェは量産されるのでしょうか。八谷氏の話によるとM-02Jのような乗り物は航空力も構造設計も、量産するには全く非効率でとても製造が大変だったそうです。八谷氏はもともとアーティストで、このメーヴェも1点もののアート作品と位置付けているようです。この難解でアーティスティックなメーヴェは、参入障壁が高いからこそブルーオーシャンとして誰か1人が買ってくれれば採算が取れるとも語っていました。ということは、残念ながら今はメーヴェを量産しようとは考えてはいないようですね。, せっかくならメーヴェに乗って風の谷のナウシカの気分を味わいたいものですが、一般にはその機会はないのでしょうか。八谷氏の過去作品であるM-02は金沢21世紀美術館に展示され、一般に開放されています。美術館に行けば飛行機の大きさや材質を生で見ることができますので、ご興味のある方はぜひ足を運ばれてはいかがでしょうか。また、八谷氏は過去の個展ではメーヴェの胴体部分の実機を使ったフライトシミュレーターも公開していて、メーヴェに乗っているかのような飛行体験をすることもできました。今後もシミュレーターを公開する可能性もありますので、個展が開かれた際はメーヴェに乗るチャンスがあるでしょう。, 八谷氏は「自分がマッチョな感じが好きだったら『ガンシップを作る』と言ったかもしれないですけど、正直あんまり戦闘機には興味ないんです」と述べていました。非常に残念ではありますが、ガンシップまでは開発されないようですね。ただ、八谷氏のものづくりのスタンスは、単に見るためだけのアート作品を作ったり、実物の形状を再現するだけということではなく、実際に乗り物として機能するためにいかにオリジナルを生かしたままアレンジするかということに重点を置いているように思えます。実用型のアーティストと言えますね。やっぱり、個人的にはぜひともガンシップの実物も見てみたいものですが、ガンシップの開発にはメーヴェの1億円という費用をはるかに超えそうですね。, 「風の谷のナウシカ」の壮大な物語と創造力豊かな世界観は多くの人を魅了してきました。八谷和彦氏も高校時代に風の谷のナウシカを観て感動し、ナウシカのメーヴェにも感銘を受けたのが開発のきっかけでした。ナウシカの生みの親である宮崎駿監督でさえメーヴェは飛ばないと断言したにもかかわらず、八谷氏の夢を追いかける情熱によって10年という歳月をかけてついに実物を作ってしまいます。原作のメーヴェの動力は不明ながらも、実際に乗り物として実用に耐えうるようにジェットエンジンを搭載するなど工夫し、少しづつ段階毎に実機を完成させてきました。2018年にはプロジェクト開始から15周年を迎えますが、今もなおメーヴェの実機は着実に開発が続けられています。もしかすると将来には新たな動力エンジンが開発され、誰もが夢のメーヴェのような乗り物を使う日が来るかもしれませんね。, 規制解除されたアニメ一覧!BD無修正版なら乳首も丸見え⁉【OVA/深夜アニメなど】, NyaaTorrentが閉鎖!代わりとなる新代替サイトを紹介【Nyaa.si,Nyaa Pantsu】, 風の谷のナウシカの飛行機「メーヴェ」が遂に実機になる!開発者・八谷和彦とは?のページです。Cosmic[コズミック]はファッション・カルチャー・芸能エンタメ・ライフスタイル・社会の情報を発信するメディアです。大人へ向けた記事をまとめて読むことができるWebマガジンを無料で購読いただけます。.